パレスチナ自治区・ベツレヘム /バンクシーと紛争

パレスチナ自治区・ベツレヘム /バンクシーと紛争

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イスラエルとの紛争が絶えないパレスチナ自治区。旅行者でも入りやすい自治区ベツレヘム紛争が地域の人々に与える影響を肌で感じながら、それらの問題に一石を投じるバンクシーのアートを鑑賞してみる。

パレスチナ自治区ベツレヘムを妄想旅行

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 中東パレスチナ自治区と聞いて真っ先に思いつくのはやはりイスラエルとの紛争であろう。それは日本人の我々にとって危険地域であり、そんな地域を旅行するなんてとても考えられないかもしれない。しかし、実はそんなパレスチナ自治区でも比較的簡単に旅することができる地域(とはいえ何かあっても責任を取ることはできないのだが)がある。それがパレスチナ自治区ベツレヘムである。私達がニュースなどで目にする地域は同じパレスチナ自治区でも、旅行者が入ることが出来ないガザ地区であることがほとんどだ。今回はこのベツレヘムでパレスチナ問題とそれをアートとして表現するバンクシーの作品を鑑賞し、これらの問題を学ぶ妄想旅行計画だ。

○ベツレヘムというパレスチナ自治区

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 このベツレヘムは歴史的に大きな意味のある街だ。それは昔も今現在も私達の世界で多大な影響を持つ人物、イエス・キリスト生誕の地である。ベツレヘムにはキリストが誕生したとされる場所に降誕教会が建立されている。また旧約聖書ではダビデの町とされている。紀元前1400年前にはすでに街を形成し、その後、ローマの侵攻や十字軍の遠征など幾たびの歴史を刻んだ街である。1967年第三次中東戦争でイスラエルが占領、その後今日までイスラエルの占領下にある。実はベツレヘムはイスラエル統治下にあるエルサレムから10キロしか離れておらず、エルサレム・ダムスクス門からバスで向かうことができる。そしてフル装備のイスラエル兵の検問を超えるとそこはパレスチナ人の街、ベツレヘムとなる。バス降りると必ず自称ガイドがイスラエルはどんなにひどくて、パレスチナ人がどれだけ大変な思いをしているかを語ってくる仕組みになっているようだ。ランチで2、3000円するイスラエル側と違い、物価が安く安心して食堂に入れるのは嬉しい。

○イギリスがやらかしたパレスチナとイスラエルの対立

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 ここで簡単にパレスチナ・イスラエル問題を紐解いておこう。

歴史的には紀元前1000年現イスラエルのあたりには、古代イスラエル王国(ユダヤ人 国家)が存在していた。交通の要所であったこの地は度々侵攻を受け、滅亡。紀元前100年ほど前には、ローマ帝国がこの地を占領しユダヤ人たちは世界各地に散らばっていった。しかし、ユダヤ民族にとってはここは、神から約束された土地であり、ここに再びユダヤ人国家を建国することが悲願だった。それから月日は流れ、第一次世界大戦までこの地はオスマン・トルコ帝国の統治下であり、散ったユダヤ人の代わりに長い時間をかけ、パレスチナ人がこの地に住み続けていた。もちろんユダヤ人も長い年月の中で、この地に多くのユダヤ人が世界各地から戻ってきていた。その頃、この地ではパレスチナ人とユダヤ人は良き隣人としてともにこの地に住んでいた。

 それが大きく転換したのはイギリスの第一次世界大戦中の出来事だ。イギリスは敵国トルコに勝利するため、この地に住んでいたパレスチナ人を含むアラブ人(オスマントルコはトルコ人国家であって、アラブ人とは違う)に、対オスマン・トルコ帝国への攻撃を示唆する。そしてその見返りとして、戦後この地にアラブ人国家の設立を約束した。一方で世界各地で金融業で成功していたユダヤ人に対しては、戦費の確保のため協力を求め、その対価として戦後この地にユダヤ人国家の設立を約束した。これが現在のパレスチナ問題の根源だ。個人的な感想を言えば、イギリス無茶です。イギリスは戦後、責任を国連に投げ、決議によってこの地を分割、パレスチナ人国家とユダヤ人国家という2つの国を作ることとなる。

 これには当然、パレスチナ(アラブ連合)、イスラエルともに納得せず衝突が始まる。第一次中東戦争がはじまり、これまでに第四次中東戦争まで行われている。ただし、アメリカ・イギリスの強力な支援を受け、一次から四次まですべてイスラエルが勝利している。

○降誕教会と立てこもり事件

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 最初に述べたように、この教会はイエス・キリストの生まれた場所に建立されているとしている。イエスは馬小屋で生まれたという話は聞いたことがあるが、ここの祭壇の下にはイエスの生まれた洞窟があるらしい。馬小屋じゃないのかとおもうなかれ、かつてこの洞窟を馬小屋として使用していたようだ。2002年パレスチナ武装勢力がここに立てこもり、イスラエル軍は教会を包囲、一ヶ月もの籠城をしていた。このときこの教会の司祭が仲介交渉をした。この事件をユダヤ人対パレスチナ人と考えるは簡単だが、イスラエルはユダヤ教でパレスチナはイスラーム、立てこもったのは建物はキリスト教と捉えると、この地がいかに三者が築いてきた土地であるのかが垣間見える気がしてならない。

○バンクシーと分断の壁と世界で一番眺めの悪いホテル

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 バンクシーは未だにその正体がわかっていないアーティストだ。イギリスブリストル出身ということまではわかっているそうだが、それ以外はわからない。もしかしたら一人ではなくチームなのかもしれない。そんなバンクシーだが、有力な説として音楽ユニットの「マッシブ・アタック」の3Dではないかという。そんなバンクシーは、もともとイギリス国内でグラフィカルライターとして非合法に公共の壁などを使い社会批判をしてきたい人物である。通称アートテロリストともいわれている。

 バンクシーが初めて国際的な問題を取り上げたのがベツレヘムにある「花束を投げる青年」だと言われている。これは強力な武器を使うイスラエル軍に対し、パレスチナの青年たちは投石で立ち向かった「インティファーダ(民族決起)」を背景に描かれたものだ。彼の作品はこのベツレヘムに複数描かれている。また「分断の壁(イスラエルがパレスチナ自治区との間に建設し、自由に行き来出来ないようにした壁)」にもバンクシーはアートを描いているが、それだけではなく分断の壁のすぐ目の前にホテル「世界一長めの悪いホテル」を建設し、ホテルの趣旨を通して痛烈な批判をしている。バンクシーはこの分断の壁を「この壁は国際法に違反しており、パレスチナを世界で最大の野外刑務所と変えてしまうものだ。」と評している。残念なことに彼がイスラエル兵に銃口を向けられながら分断の壁に描いた9点の作品は、現在は「分離壁をこじ開けようとする2人の天使」一点しか残っていない。バンクシーの作品をどのように感じ、考えるかは人それぞれだと思うが、このような問題にかつては関心を持たなかった世界の人たちには、問題を知らしめるきっかけになったことは事実だろう。

○中東の大定番ファラフェル

 ファラフェルは近年日本でも食べられるところが増え、日本のコロッケと似ていることからも、だいぶ浸透してきているのではないかと考える。ファラフェルはひよこ豆、またはそら豆を潰し、スパイスで味付けをした揚げ物で中東では広く一般的な料理である。語源はアラビア語の「辛きもののすべての母」という意味らしい。実際イスラエル建国当時、食糧難で深刻な栄養不足を補ったのはファラフェルであったし、現在さまざまな深刻な状態であるパレスチナの人々にとってもソウルフードの一つと考えると、「辛きものの母」という名前の由来には考えさせられる。

○アルギーレは中東の社交道具

 日本でも最近飲みニュケーションは昭和の遺物なんて言われてきているが、企業によっては、これらが廃れてきたことで社内コミュニケーションも低下していると分析し、社内にバーを設置し社員のコミュニケーションの場として活用してもらうなんてことがあるようだ。実は社会の中でこのようなコミュニケーションの場は、いつの時代にも存在していて、古代ギリシャでは風呂や広場であったし、近代ヨーロッパではサロンと言う名の社交場が存在した。現代ではインターネットの中にサロンは存在するし、少し前に流行ったクラブハウスなんていうものも、大きな意味ではそれに当たるのかもしれない。そしてここイスラームでは原則アルコールは禁止であり、社交の場で飲用されるものとしてチャイがあった。チャイを提供し社交の場であるチャイハネが中東地域で広まり、そこにイラン地域では水タバコ(アルギーレ)も提供されていった。チャイにアルギーレに世界最古のボードゲーム、バックギャンという中東まったりタイムの三種の神器で現地人をのんびり雑談しながら様々な話を聞くこともまた大きな学びの一つである。

今回の妄想旅行計画INベツレヘムは、歴史的にも政治的にも私達日本人からすると学ぶことが多い地域だ。ここで世界の現実に目を向け、世界中に山積する多くの問題に目を向けるきっかけとなる旅になると願う。

●旅程
早朝:エルサレム・ダマスクス門前からベツレヘムへ移動/バス231番
9:00:朝食/パレスチナ自治区で朝食→ホブスとチーズゆで卵、オリーブ、チャイの定番朝ごはん
10:00:ベツレヘム中心部のメンジャー広場に立つ聖誕教会見学/キリスト生誕の地
12:00:昼食/ファラフェルとフムスとホブス/ひよこ豆のコロッケは中東の定番フード
13:00:バンクシーのアートを見に行く①/インティファーダと花束を投げる青年  
15:00:なんちゃってスターバックスベツレヘム店でカフェタイム 
16:00:分断の壁とバンクシー/パレスチナとイスラエルを分断する壁にはバンクシーの作品が複数描かれている
18:00:夕食/中東の定番鶏の丸焼きを食す
19:00:シーシャで一服
20:00:宿/世界で一番眺めの悪いホテル/バンクシーが手がけたホテル

ベツレヘム

降誕教会

世界一眺めの悪いホテル

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